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EMI

Author:EMI
4人の子どもの母で、ステップファミリーです。

これまでの子育ての経験を元に、
ママたち・パパたちの応援団をしています。

子どもは親を選んで生まれてくるようです。
そしてだれもに、生まれてきた理由があるみたいです。

尊い人生を心豊かに・・・丁寧に・・・

ウキウキワクワク・・・生きていきましょう。

~あなたに代わる あなたはいません~

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胎内記憶のリサーチをしています。 お子さまの胎内の記憶・誕生記憶・雲の上での記憶など・・・お話でも、お絵かきでも構いません。 是非、お気軽にご連絡ください。 luckyemi3580@yahoo.co.jp

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夫婦

私が老人ホームで働き始めた1年前もそうでした。
同じお部屋に入っていらしたその老夫婦は、
手を繋いで、ホームの中をお散歩しておられました。
「家内が一緒に歩いてくれ、っていうもんでね・・・」
ご主人は、照れ隠しのようにそう言って、挨拶してくれたのでした。

五月晴れの陽だまりの中を二人は生きていたのです。

暫くして、ご主人の部屋を掃除に行くと、ご主人のベッドの上に
認知症に関する本が数冊並んでいました。
隣の奥様のベッドの方を見て、まさか・・・と思いました。
でも、ただただいつもニコニコしている奥様が、
ご主人を指さして、「あのおじさん、誰?」と私に聴いてきたセリフは
やはりそれを認めざるを得ませんでした。

冬には、「家内の肌がカサカサになってしまってね・・・。」
と、ご主人のご要望通り、奥様のお肌につけるクリームを買いに行きました。
海苔の佃煮を買ってきてほしいと頼まれ、
固い瓶の蓋を少し緩めてお渡しした時など、
「よく気がつきますね~。ありがとう・・・。」と目を細めて喜んでくださいました。
今は亡き両親のお陰で、少しだけお役に立てたことを嬉しく感じました。

しかし、今年に入ってからは、何だかあまり体調が芳しくないようで、
お散歩をされる様子もあまり見かけなくなりました。
ふとご主人の足を見ると、かなり浮腫んでおられたのです。

奥さまは、相変わらず、チンプンカンプンなことを言ったかと思えば、
ダイニングルームでテレビを観ています。
鳩山政権の話題から、お相撲やサッカーの観戦、サスペンスドラマまで、
そこにテレビが付いていれば、ずっとテレビのまん前に座って、
ただただテレビを観ています。

私はそれをただ見守っているしかありませんでした。

そんな日々の続いたある日、
突然ご主人の様態が悪くなり、救急車で入院されました。

「いないのよ!」と私の腕を掴んで奥様がご主人の行方を聴いてきました。
驚きました。 ・・・え?奥様、解っていらしたの?・・・
「検査のために、ちょっと外出されただけですよ。直ぐに帰っていらっしゃいますよ。」
私はつい、方便をついてしまいました。

いつもなら、入院された場合は、シーツを剝しただけにするのですが、
新しいシーツに交換し、まるで変わらない状態にすることにしました。
マットレスだけでは、あまりにも、殺風景になってしまうからです。

数日後、ご主人は帰ってきました。
しかし、それは人生の最終章をこの老人ホームで過ごすと決められてのことでした。
お二人にはお子さんがいらっしゃらず、
お二人の場所はここしかなかったのです。

それからのことです。
本当に不思議で、何とも言えない風景を見せていただいたのは・・・。


あれほどまで、チンプンカンプンのことばかりの奥様が、
四六時中、ご主人の手を握っておられたのです。
いつ何時、何が起こってもいいように、
ご夫婦のお部屋は開けっ放しになっていました。
ですから、そのお部屋を通るとき、
必ずご夫婦のその在り方が目に入ってくるのです。

「寒いの?大丈夫?私が付いてるから、大丈夫よ」
私だけでない、介護スタッフや支援者の心に痛々しく、その優しい声は響きました。

五日後、ご主人はあの世へ旅立ちました。

いつもダイニングでテレビを観ていた奥様のその場所に、
まるで何の事情も知らない、100歳近いお婆さんが座り、
お気に入りの電子ピアノを弾いていました。
「月の砂漠」「カエルの歌」「蛍のひかり」・・・
やはり、時々とぼけたことをおっしゃるそのお婆さんの
潜在意識に残っていた音階も素敵でしたが、
この状況をまるで察しているかのようで、
その曲は、悲しいほど美しく、ホーム内に響き渡りました。

翌日、老人ホーム内で、葬儀が執り行われました。

私は、最期のお別れをさせていただき、お花をあげさせて頂くと、
車いすに座った奥様に深くと頭を下げました。
奥様は、やはりいつもと同じように、ニコニコしていらっしゃいます。
それは、全ての執着を捨てた笑みなのでしょう・・・。
全てを祝福しているようでした。
祭壇では、ご主人が微笑んでいます。

お部屋に、爽やかな風が吹き渡りました。

離れ離れになっても、
私が老人ホームで働かせていただき始めた頃の、
1年前とまるで変わらず、
五月晴れの陽だまりの中を、
二人は今でも共に生きているのです。


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